case1 始まり

5/8
26人が本棚に入れています
本棚に追加
/135ページ
 ハードメモリーグローブはまあ、見た目はライダーグローブの手の甲部分に収まる機械がついているだけで、何にも変わらない。ただ、使う時は必ず着けるようだ。  …どうやら、形がかわっているだけでなんて事はない普通のパソコンのようだ。しいて言うなら、ヘッドセットのくせにマイクが見つからない事ぐらいか。 「目が悪くなりそうだなぁ」  ベッドセットモニターを眺めながら、思わずつぶやく。顔からモニターまで三センチしか離れていない。…ストロボ演出の画面には極力気をつけないとな。  早速自分の部屋に元々あったパソコンからデータをコピーしておこう。  バージョンが古いから、あらゆるソフトが更新できずじまいだったが、これで買い物やチャットに時間をかけなくてすむと思うと、さらにゲームのフリーズに泣かなくてすむと…もう嬉しくて仕方ない。コピーやデータのインストールで三十分もかかったが、遊び場が広がるなら問題ない。 「んじゃ、いきますか」  机にセットした新しいキーボードを前に、ベッドセットを頭にかけモニターを見る。 「あっ、すげぇ手元のキーボードが見える」  サングラスみたいと言えばなんとなくわかるだろうか。外から見ると黒いが中からはきちんと見える。これならキーボードの打ち間違いとかで、モニターを上に上げてなんて事はしなくてすむ。  少しベッドセットのコードが邪魔だが、問題なく使えそうだ。 「さてと、ちょっと見てみるかな」  ワクワクしながら、パソコンの電源を入れた。 『Welcome to *****』 「あれ?最後だけなんで読めな…」  その時だ。  グラッと目眩がした。いや、身体は何でもないのに急にふわりと浮いた感覚がしたと思えば、グルグルと回転させられてる感覚になる。 「うわっ、なんだ…これ…」  パソコンに酔うなんて事があるなら、こういう感じ何だろうか?いや、なしだ。実際に身体は浮いていないし、椅子だって回るやつじゃない。
/135ページ

最初のコメントを投稿しよう!