case1 始まり

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『navi:では早速ですが、手をご覧ください』 「待った、ご覧くださいって?」  そうご覧くださいも何も最初から『navi』の姿はなく、モニターに文字が出る程度。ただ、それがわかっているのか『navi』は丁寧にこう文字に出した。 『navi:ユーザー様の手をご覧ください。ユーザー様が先ほど首を動かしていたように、視線を手のひらにあるいは手をモニターに近づけて下さい。』  …あ、なるほど。オレの手ね。とりあえず言われるがままに手をモニターに近づける。モニター越しの手は、アバターの手と連動して同じように動く。 『navi:ユーザー様の着けていますハードメモリグローブは、タッチパネルやマウスと同じ機能が備わっています。しかし、アバターを歩かせるために先ずは左手を軽く振ってください』  左手が前進をさすらしい、まあやってみるか。とりあえず左手を振る。  視界がゆっくり動き出した。アバターが前進した。 『navi:左手を振る回数が多いほど移動速度は早くなり、握り拳を作って頂ければ止まります』 「まるでアクションゲームのチュートリアルだなぁ」 『navi:私はそれをベースに操作方法を案内させて頂いております』  ゲーム風の説明か、どんな年齢にも対応できる点でわかりやすい。…しかし、どうでもいいがこの『navi』の口調とも言うべき文章はみょうに真面目だ。これ、人間だったら真っ先に胃潰瘍にかかるタイプだろうな。…まさか、『navi』に中の人がいたりして。 「ところで『navi』って人間だよな?」 『navi:違います、ゼノンシステム使用法案内機能のAIです』  …証拠を見せろと言っても文字だけだからなぁ。 『navi:まだ疑われていそうなので、先ほどインストールされましたソフトウェアを列挙させていただきますと…』  って、待て。今ここで、オレのこっぱずかしい趣味嗜好をオンラインに乗せるつもりか! 「待った、やるならオフラインで頼む」 『navi:ご安心ください、私はプログラムです。そもそもヘルプ機能と同じでユーザー様としかお話しておりませんしこのチャットは元々オフラインです』  それを早く言え。
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