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タクト
「―――以上が、先の戦闘でのAH-001“ナイトウィング”の戦闘データです」
“EDEN”宇宙に浮かぶ本星、その衛星軌道上に浮かぶ“ロストテクノロジー”の結晶、“白き月”。本来の目的である兵器製造機能はすでに停止し、その役目を終えている。謁見の間にてシヴァ女皇陛下に先の戦闘での報告を行っていた。
ルフト
「……グラール・ハイベルなる男も気になるが、今までシステム起動すらしなかった機体が何故……」
タクト
「原因については、現在整備班が全力をあげて捜索中です」
一度“白き月”へと帰投した“ルクシオール”は補給も兼ねた一時の休息を過ごしていた。アスカはティーラウンジから覗ける紋章機の修理風景を眺めながら、一人思う。
また、こんなことの繰り返しか。
アプリコット
「アスカ君、どうしたの?」
アスカ
「えっ、ああ、いや、別に……」
いきなり声をかけられて驚くが、すぐにまたもとの険しい顔にもどる。
アプリコット
「どうしたの?恐い顔して……」
アスカ
「………僕が撃墜したあの艦………誰か乗ってたのかな?」
アプリコット
「報告では無人艦だったって聞いたけど……どうして?」
アスカ
「……軍人である以上、死は免れない。けど、僕はそんな風には思わない。あの人達だって、恋人や家族……色々な人達がいた筈なんだ。なのに………」
拳を握りしめるアスカを見て、アプリコットは少し同情する。だが彼女はあえて笑顔を浮かべて持っていた箱からマフィンを一つ差し出す。
アプリコット
「これ、二人で作ったの。元気でるようにって」
アスカ
「二人って、もしかしてカズヤから?」
アプリコット
「うん。さっきの戦闘以来なんか元気なかったから……」
どうやら、気を使わせてしまったらしい。アスカはいささか申し訳なさそうに笑い、マフィンを受け取る。
アスカ
「……ありがとう。ちょっとだけ元気でたよ」
アプリコット
「本当に?よかったぁ……」
胸をなで下ろし、仕事があるからとアプリコットは足早に駆けていった。アスカは受け取ったマフィンを一口食べて、窓外を見る。
アスカ
「……うん。うまいや」
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