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一方、アスカの見つめる窓の向こうでは月の巫女達を交えた“ナイトウィング”のフルチェックが行われていた。設計担当も担ったミント・ブラマンシュもこれに同行し、次々に送られてくる報告をモニターとにらめっこしながら思考を巡らせる。
ミント
(突如起動した機体……今まで一度もシンクロすらしたことのなかった機体が目を覚ました。それだけならとても喜ばしいことですわ。けど………)
ミントはコンソールを操作して“ナイトウィング”のブラックボックスにアクセスする。これはこの機体が発見された同時に採取したデータから【送られてきた】データだ。その中には他の機体の存在以外に、この機体についての詳細が断片的ではあるが記されていた。
“AESシステム”(アンチ・エンブレム・システム)。その名の通り、紋章機に物理的ではなく内部的―――ようするに、システム的干渉のできるシステムのことだ。使い方によっては、“H.E.I.L.O”にダイレクトリンクしパイロットの意思に関係なく思うがままに操作できてしまう。それほど危険な代物なのだ。
ミント
「……こんなシステムがどうして……」
考えていると、大方の整備を終えたクレータがチェックボードを片手に戻ってくる。ミントはアクセスを切り、笑顔で彼女を迎えた。
ミント
「お疲れ様ですわ。クレータさん」
クレータ
「ミントさんこそ、あまり寝てないんじゃないですか?」
ミント
「この位なら支障はありませんわ。それより、ブラックボックスの解析、順調ですか?」
クレータ
「それが全然。またいつものだんまりで」
コーヒーを淹れながら、クレータは困ったような表情で話す。
クレータ
「システムチェックしようにもパイロット以外のアクセスは全部ブロック。ブラックボックスどころかプログラミングそのものを拒絶しちゃって……」
ミント
「プログラミングを拒絶……?解析不能だけではないんですの?」
クレータ
「はい。今までこんなこと一度もなかったのに……まるで、意思があるみたいなんです」
紋章機といえども所詮は機械。パイロットを選ぶデリケートな機体であっても意思までは存在しない。
やはり、何かが違う。ミントはそう思いながらコーヒーに砂糖を山盛りに入れる。
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