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宇宙コウモリ―――ミモレットはその名に戦慄した。
宇宙コウモリとは、その名の通りコウモリの形をした宇宙生物のこと。見かけは愛くるしいぬいぐるみのような姿をしているが、本性は生き物の血を喰らい、恐ろしいモンスターへと豹変する吸血鬼だ。昔“マジーク”で宇宙コウモリが大量発生し何万人もの犠牲者が出たという。それ以来、宇宙コウモリの取り扱いは公認A級魔女か魔力を無効化できるごく一部の騎士にしか許されていない。こんなバケモノをカルーアが仕入れたということは、研究に使うつもりが檻を破壊して逃げ出したということだろう。このままほうっておけば、24時間以内に艦内は血の海になる可能性もおおいにあり得る。
その光景が想像できてしまったミモレットとカルーアは急いで艦長のココに緊急回線で呼びかけた。
カズヤ
「第一階警戒態勢!?」
カズヤの自室にて談話していたカズヤとアスカは発せられた警報に緊張感を張り巡らせる。
ココ
《現在、艦内に宇宙コウモリが放たれました。各員、部屋の扉をロックし、騒ぎが沈静化するまで出ないように。尚、被害拡大を抑えるため、本艦と“白き月”への行き来を遮断します》
つまり、自分達はバケモノのうろつく檻の中に閉じ込められたということだ。幸いに戦闘でないことだけは幸運だったが、これでは身動きが取れない。
アスカ
「宇宙コウモリ……どうしてそんな危険なものがこの艦に?」
カズヤ
「なんとなく原因はわかる気が……」
苦笑いを浮かべながらも、今回ばかりはシャレにならないレベルの事態だ。カズヤはエンジェル達に通信回線を開く。
カズヤ
「みんな、無事?」
モニターに全員の顔が映し出されたのを見てホッと胸をなで下ろす。
アスカ
「……あれ?カルーアは?」
よく見ると、カルーアの姿がない。このことに直感したカズヤは部屋を飛び出そうとする。
アスカ
「カズヤ、どこ行くの!?」
カズヤ
「カルーアは多分、責任を感じてる筈だ。彼女なら、きっと自分でこの事態を抑えようとする!」
扉のロックを解除し、部屋をとび出す。
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