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フォルテ
「またあいつのこと見にきたのかい?」
タクト
「まぁね」
フォルテ
「おまさんには悪いけど、アタシは適性があるとは思えないね」
そう言ってコンソールを操作して学生たちのデータから一人のデータを読み出す。
フォルテ
「アスカ・ティラミス……操縦技術はまるで駄目。ペーパーテストもまわりから見たら下だ。まぁ、優れているといったら……」
タクト
「人並み外れた反射神経と、直感。だろ?」
フォルテ
「ああ。ま、そこだけ見ればだけどね」
見ていたデータを閉じ、訓練終了のチャイムを鳴らす。
フォルテ
《訓練終了。各自身仕度を整えて第三多目的ルームに集合!》
フォルテ
「……ま、選ぶのはアタシらじゃなくて“ナイトウィング”だけどね」
そう吐き捨て、フォルテは管制室をあとにした。
タクト
「……やっぱりここは女神に任せるしかないのかな……」
フォルテ
「本気かいタクト!?」
タクト
「もちろん」
ちとせ
「でも彼は……!」
猛反対するフォルテとちとせ。無理もない。彼が選んだのは成績優秀な学生ではなく、例の少年――アスカ・ティラミスなのだ。
タクト
「選んだのはオレじゃない。これは“運命の女神”のお告げだよ」
フォルテ
「…タクト、あんたって男は………」
ちとせ
「またミルフィー先輩に選ばせたんですか……」
呆れたように言う二人にたいし、タクトは開き直ったかのように言う。
タクト
「まあ信じてみようじゃないか。彼女の選択を。そして、女神に選ばれた彼をさ」
と、突然ドアがノックされ、外から声が聞こえてきた。
アスカ
《アスカ・ティラミスです。お呼びでしょうか……?》
タクト
「入ってくれ」
「失礼します」と言って、扉がゆっくりと開く。褐色の、伸びた髪と、その奥にある翡翠色の瞳と年と性別の割には女の子っぽい顔が特徴的な少年は、恐る恐る室内に足を踏み入れた。
タクト
「君がアスカ・ティラミスか……こうして話すのは初めてだよね」
アスカ
「は、はい……あの、また何かまずいことしましたか……?」
緊張しているのか、若干声が震えているのは目に見えてわかる。
タクト
「いや、そういうことじゃない。実は君に逢いたいという人がいるんだけど………」
アスカ
「ボクに………ですか?」
タクトは頷き、肘をついてアスカを見る。
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