10人が本棚に入れています
本棚に追加
無造作に刺さったナイフをとり、アスカにジッと詰め寄って上から下までくまなく見渡す。
アニス
「……おいおまえ」
アスカ
「な、なんでしょ……」
アニス
「オレとタイマンはれ」
と、こんな流れで場所は大展望公園。アニスに半ば強引に連れてこられてアスカは当然のこと、乗り気ではない。しかもいきなり女の子に「タイマンはれ」などと言われて素直に「はいわかりました」と言う男子など、この世界中探してもどこにもいるわけがない。タイマンと言っても、内容てきには喧嘩みたいなものだ。女の子に殴る蹴るなど、もってのほか。
アスカ
「あの、どうしてもやらなきゃだめなのかな?」
アニス
「ったりめーだ」
聞く耳もたんと言わんばかりの即答ぶりにアスカは内心ある程度は覚悟し始めていた。
アニス「どうした。来ないんなら、こっちから行くぜ!?」
体勢を低くして足早に駆け抜けて間合いを詰めて懐にもぐりこむ。低い体勢のままから右足を突き上げて一発K.Oを狙う。が、アスカはそれをごく僅かな動作でかわし、逆に退がって距離をおく。
アスカ
「あ、危ないじゃないかいきなり!」
平然とした顔でいるアスカ。
さっきの蹴りは完璧だった。かわす隙も、防ぐ隙も与えない筈だった。なのに、かわされた。いとも簡単に――いや、かわしたのか?
アニス
「そんな筈ねェ……もう一度!」
試すかのように、アニスはもう一度踏み込んで間合いをつめる。
アニス
「ここだ!!」
確信のついた、右ストレート。この間合いなら、かわすことはまず不可能だ。ガードしたとしても、バランスを崩して倒れてしまう。端から見ているカズヤにも、それが見て取れた。
が、アニスの放った拳は標的を捉えることなく宙を貫いた。
消えた!?
いや、違う。下にかがんだのか!?
持ち前の反射神経ですぐさまアスカの姿を捉える。が、その時はすでに回り込まれて腕をかためられたあとだった。気がついた頃には、もうすでにアニスの身体は地にふしている。
アニス
「っツ………!」
締め上げる手に痛みが走り、顔を僅かに歪める。と、アスカはハッとなったように慌てて関節技からアニスを解放した。
アスカ
「ご、ごめんなさい!……あの、大丈夫ですか?」
恐る恐る起き上がるアニスの様子をうかがうと、彼女は信じられないていった顔をしていた。
最初のコメントを投稿しよう!