壱 ここで会ったが何年目?

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   シャルラがその女性の鮮紅色の双眼を真っ直ぐに見ると、小さく溜め息を漏らす。 「西宮の繁華街ね」 「私もついていきましょうか?」 「いらない」 「そう。気をつけてね?」  女性の言葉を最後まで聞かずにシャルラは立ち上がり、未だお茶を啜る龍生を軽く睨んだ。 「え? もう行くの?」 「私は時間を無駄にしたくない」  きっぱりと言い放つシャルラに男は苦笑を浮かべると、深々と頭を下げる。 「お嬢。ご武運を」 「ちょ、シャルラ! 待ってよ」 「もたもたするな」  準備の出来ていない龍生を尻目に力強く歩き出すシャルラ。慌ただしく立ち上がり、龍生はシャルラを追って店を後にした。 「……コルン。あの男は何者ですか?」 「客人と言っていましたから、招かざれる客ですね」 「招かざれる客か……大切な妹に変な虫でも付いたら大変ですね。至急、調べを」  先ほどまでの穏やかな声を翻し、女性は低い声で怒りを露にする。 「……御意に。クラース様」  そう男が返事をすると、女性は柔らかに微笑みを称えて二人が去っていった扉を見つめた。微かに開いたそこから僅な熱を帯びた風が店の中へと吹いている。 「まぁ、あの男がシャルラに相応しくないのは決まっていますがね」  女が結ばれた口から漏らす笑い声は、不穏に満ちていた。  
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