壱 ここで会ったが何年目?

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   女性から聞いた“西宮の繁華街”まで辿り着くと、シャルラは明らかな嫌悪を現した。それもその筈、一目でその筋の人間と分かるような顔に傷のある男や、艶かしく着物を着崩した女が道を行き交っている。  頭を抱えて溜め息を漏らすシャルラの横で、龍生は怯えるわけでもにやけるわけでもなくただただ冷静に人々を観察していた。 「吹き溜まりみたいな場所だねぇ。病気持ちや薬惑(やくまど)いがたくさんだ」  小さな声で龍生に耳打ちされ、シャルラは素早く龍生を見上げる。するとその反応に気を良くした龍生が柔らかく微笑んだ。 「なんで分かる?」 「んー……ヒミツ。敢えて言うなら、勘かな。それにしても、シャルラは無謀だねぇ。こんな場所に単身で乗り込むなんて」  まだ若い二人に目をつけた男が数人、近づいてくるのを横目に龍生は楽しげに笑い声を弾ませる。その言葉を聞いたシャルラが更に嫌悪を強めて、龍生を軽く睨んだ。 「喧(やかま)しい。勝手についてきたのだから、文句は言うな」 「この状況じゃ、追いかけられるだけじゃすまないね」  怒りを露にしたシャルラは目の前に立つ数人の男どもへ視線を送ると、男どもは下卑た笑いを浮かべる。その下品な表情にシャルラは更に嫌悪を強め、明らかな侮蔑を視線に滲ませていた。  
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