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「まだ若ぇのに、こんなところに何か用かい? 遊びで来るようなところじゃねぇよ」
「お嬢ちゃん、可愛い顔してるなぁ。うちで働かねぇか?」
男どもから香る独特な“甘い薫り”に龍生は顔をしかめた。そして直ぐにここは危険だと判断し、自分達を囲う男どもの人数と位置を確認する。
「シャルラ。二対十じゃ分が悪いよ。一端、逃げよう」
「逃げる? そんなつもりは私にはない」
先ほどまでの嫌悪や侮蔑の感情などシャルラにはもう無かった。ただ目の前の悪人を斬ることだけを考えているのだろう。白く美しい手を腰に差した刀に添えている。
「シャルラ。無策にも程があるよ。こいつらを斬り捨てたってまだ他にもいるんだ。全員を相手にするつもり?」
「この国の悪人は全て排除する。それがタオス家だ」
機械的な返答に龍生は明らかな焦りを示した。シャルラを庇うように立ち、シャルラが臨戦態勢であるのをさりげなく隠すと龍生は作り笑いを浮かべる。
「シャルラは絶対に剣を抜かないでね。ここは僕がやる」
後ろ手にシャルラの右腕を掴むと龍生は大きく溜め息をついた。二人を囲む男どもはニヤニヤと嫌な笑いを溢す。
「兄ちゃんには話はねぇよ。痛い目に会いたくなきゃ、お嬢ちゃんを置いて逃げな」
「答えるとは思わないけど……ここの元締めは誰だ?」
「あん? 人に聞く態度がそれか?」
男どもの内の一人が凄みながら一歩前に出て龍生を睨み付ける。
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