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「ちょっとシャルラ! 怪我させないでってば」
「五月蝿い。私は言われた通りに剣は抜いてないぞ。それにこれくらいは怪我とは言わん」
龍生の言葉に溜め息を漏らしながら反論すると、シャルラは未だ大勢で二人を囲む男どもを鋭く睨み付けた。
「そんな屁理屈……」
「とりあえずだ。怪我をさせなければいいんだな?」
大きく深呼吸を一つすると、シャルラは鞘に入ったままの日本刀を男どもへと向ける。
「お嬢ちゃんが相手か? 遊んでやるよ」
「龍生。私に近づくなよ。巻き添えになったって知らないからな」
相変わらず下品な話し方や笑い方しかしない男どもに嫌気が差したのか、シャルラの表情は男どもを心底嫌厭(けんえん)していた。
「シャルラ!」
「喧しい。わかってる!」
両脇から襲いかかってくる二人の男を交互に一瞥すると、シャルラは右側の男の腹部を鞘で殴り付けた。当て身ではなく、最後まで振り抜くその一撃に、男は成す術もなく飛ばされる。その勢いのまま、左から襲いくる男の脇腹めがけて刀を叩きつけた。
「ぐあ」
男はそんな叫び声を漏らし、倒れ込む。龍生がシャルラの名を叫んでから、男が沈むまで三十秒と経たなかった。あまりの速さに、未だ何もしていない男どもは後ずさる。
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