壱 ここで会ったが何年目?

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  「この匂い……キミも薬惑いか……」  僅かに流れてくる匂いを嗅ぎとった龍生が小さく呟いた。それは鼻にまとわりついて離れない、熟れた果実が放つ甘ったるい匂い。逃げ去った男どもよりも強い芳香を纏う男は憎むかのように自らを睨む龍生を見て、至極楽しげに微笑む。そしてゆっくりと空を仰ぐ。 「キミも、タオス家の人間ですか? キミの足元で蹲っている奴らをキミが倒す瞬間も見ていました。そちらのお嬢さんには及ばないまでも、実に鮮やかでしたね」 「残念ながら僕はタオス家ではないね」  男は両手で顔を覆うと、漏れ出る笑い声を抑え込もうとする。しかし、指と指の隙間から押さえることの出来ない声が流れ出ていた。 「龍生!」  突如、手にした小刀を構え人間とは思えない速さで男が龍生を襲う。それに素早く反応したシャルラが二人の間に割って入り、鞘に入ったままの日本刀で小刀を受け止めた。 「この速さについてきますか。流石はタオス家と言えますね」  ぼそぼそとなんの熱も篭らない口調て呟く男の顔には表情らしい表情が全て消えて、能面をつけているかのよう。無機質な攻撃の太刀筋は正に一連の動きを刷り込まれた機械だ。  速さは尋常ではないが、この程度ならばと気の緩みがシャルラに芽生える。それが命取りだとは気付かず、シャルラは攻めの算段を始めた。  
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