19人が本棚に入れています
本棚に追加
「動きが鈍くなってきましたね。どうしたんです? ばててしまいましたか?」
男の攻撃を全て受け流しながら、機会を伺っていたシャルラに男は腹の底から笑い声を漏らす。シャルラは疲れた訳では無かったが、悔しげに男を睨み付けた。
それは男を煽るための演技であり事実、男の動きが大振りになり始める。
「これしき……!」
「この程度ですか? 噂のタオス家がこれでは聞いて呆れますね」
止めの一撃と言わんばかりに小刀を握りしめた右手を大振りに振ると、男の脇腹ががら空きになる。シャルラはそれを見逃さずに、男の攻撃をかわすと相手の右手首を掴んだ。
「な……ッ」
突然の出来事に男は驚愕の表情でシャルラを見る。シャルラは当たり前だと言わんばかりの目で男を睨んでいた。
シャルラの刀が男の脇腹に当たるという正にその刹那、男の左手がシャルラを襲う。その手に握られた小刀がシャルラの右頬を掠めた。シャルラの右頬に刻まれた紅い一本筋の傷口から鮮血が流れる。
シャルラが怯んだ隙を狙って、男の右足がシャルラの脇腹に叩きつけられた。よろけたシャルラは、掴んでいた右手首を放してしまう。
「くく、物足りませんよ。この程度では」
地面にしゃがみこんでしまったシャルラを見下して、男は呆れを露に溜め息を漏らした。
最初のコメントを投稿しよう!