壱 ここで会ったが何年目?

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  「アンタは薬惑いじゃないんだな。匂いがしない」 「ほぅ、匂いをかぎ分けるか。大したものだが、この一帯に溢れる匂いで鼻が慣れてしまったんじゃないか?」  刀を首にあてられているというのに男に笑みを向けながら言い放つ龍生。すると男も笑みを溢す。それは柔らかな笑みの龍生とは違い、威圧するかのように硬い笑みだった。 「……それはないよ。薬惑いの判定は、匂いだけじゃないし。まぁ、匂いが一番の要素なのには変わりないけど」 「ふむ、賢いな」 「ジアン兄貴。雑談しとる場合じゃないと思いますが?」  シャルラの背後に座る少女が疲れきった表情で男を見上げ、小さく溜め息を漏らす。 「なッ……」 「動くなって言われませんでしたかねぇ? 私は、貴女を刺しますが?」  少女は単調な声音でシャルラを威圧すると、シャルラの背にクナイの切っ先を当てた。ひやりとした感触と小さな痛みが、シャルラを焦らせる。 「そんなビビらんでください。我々は、貴女よりも鍛えてるんですヨ。貴女方、上のヤツラを蹴落とす為に」 「ダオレ。ワクワクするのは分かるが、あまりはしゃぐな」 「はぁい」  少女は怒りを内に秘めながら、男への不満を露にする。  
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