壱 ここで会ったが何年目?

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  「オレはジアン。で、そっちがダオレだ。カシラがお前らをお呼びでな、抵抗せず素直についてきてくれると有難いのだが?」  咳払いを一つついて気を取り直すと男――ジアンは淡々と言い放つ。ジアンを睨み付けるとシャルラは龍生へと目線を送った。ジアンの忠告を破り走って斬りかかっても龍生を助ける前にジアンは躊躇い無く首を跳ねるだろう。  その前にシャルラの背後に立つ少女――ダオレによって致命傷を追わされるのは明白だった。 「シャルラ。ここは彼の言う通りにしよう」 「ほう、話がわかるようで良かった。お前の名は?」 「龍生」 「姓は?」 「そこまで聞くの? ……柳林」  ジアンに明らかな不満を抱いた表情で、龍生は渋々と答える。苦虫を噛み潰したような何とも言えない目で、シャルラから視線を反らした。 「な……!」  龍生の名前に驚きを示したのはジアンでもダオレでもなく、シャルラである。  それもその筈、柳林という家柄はタオス家と並ぶ名家でありタオスと柳林と言えば犬猿の仲と称されるほどに仲が悪い。  それはどんな手を使ってでも――例え、自らや相手にどんな傷をおわせてでも国の治安や王家のためならば手段を選ばないタオスに対し、医学の権威であり他者の為に力を注ぐ柳林。遥か昔、時を同じくして王家の配下についた両家は事あるごとに対立し、言い争いを続けてきたのだ。特に、柳林がタオスを目の敵にしていると言ってもいいだろう。  
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