壱 ここで会ったが何年目?

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  「龍生が柳林……? だから『怪我をさせるな』と言っていたのか!」  明らかな不満を漏らして、シャルラは龍生を睨み付けた。龍生が仕方ないと言わんばかりに、溜め息を溢す。 「ふむ、今この状況は珍しい光景だと言えるわけか。タオスと柳林が雁首を揃えるのは有事の際のみと揶揄されるほどだしな」 「ジアン兄貴。そんな悠長に感心しとる場合じゃない思いますが? 私は先に行かせてもらいまさ」  ダオレは呆れたように言い放つと、おもむろにシャルラを抱き上げた。突然の出来事に、シャルラも声をあげることができない。 「ジアン兄貴も、ぼさっとしとるとカシラがかんかんになりまさ」  ダオレはシャルラと比べ、背丈も半分ほどしかない。しかし、そんなダオレが軽々とシャルラを持ち上げているのを見た龍生は血相を変えて目を見開いた。 「シャルラを、どうする気だ」  憎悪に満ちた目で龍生がダオレを見るが、ダオレは呆れを露に溜め息を漏らす。 「言っておきますが、私は薬惑いなんかじゃありゃせんので。そんな風に睨まれても困りますわな。心配せんでも、私はタオス家のお嬢様に手を出すつもりもありません」  ダオレは大地を踏みしめ、シャルラを抱えたまま超人的な飛躍で建物の屋根の上へ跳び乗る。そしてそのまま屋根を駆け、シャルラを連れ去ってしまった。  
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