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「私を降ろせ! 私だって走れる!」
ダオレに抱えられたままシャルラが声を張り上げるとダオレは明らかな不満をシャルラに向ける。
「……お嬢様の足では私に追いつけません。大人しく運ばれてくだせ」
「なっ……!」
「それにお嬢様の支度も必要でさ。早くせんと頬の傷、残りますが?」
意地悪く笑むと何の前触れもなくダオレは屋根から跳び降りた。あまりに突然だったためシャルラは声にならない声を心の中で上げる。
「ちょっと……警告くらいしてよ!」
「あぁ、すんませ。お嬢様を落とすようなヘマはせんので許してくださ」
飄々と答えるとダオレはこの一帯で一番大きな屋敷の前で足を止めた。豪勢な緋色の壁と屋根に白と黒の装飾を見たシャルラは不快を露にする。
「貴方たち……タオスの分家ね?」
「そうだとすればどうするんでさ? 私達は私達なりに正義をふるってるんせ。本家となんら変わりません」
大きなため息を溢し、ダオレが屋敷の戸を開く。屋敷の中も隅々まで手の行き届いた装飾が施されていた。
「あの二人とカシラが戻るまでお嬢様には奥様の相手をしてもらいまさ。精々可愛らしく奥様の着せ替え人形になってくれませ」
ニヤリと不吉に笑うとダオレはシャルラを抱えたまま屋敷の奥へと足を進める。
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