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「ダオレ。こんなとこで寝るな」
シャルラと別れてから暫くして、ダオレが屋敷の入り口で居眠りをしているとジアンがダオレの頭を叩いた。
「あぁ、ジアン兄貴。お帰りなさ」
「全く……勝手に動き回るな」
「ジアン兄貴がダラダラするのが悪いんでさ」
呆れ顔をジアンに向け、ダオレは大きなため息を漏らす。その態度が気に食わなかったジアンが再びダオレの頭をひっぱたいた。
「ところでアンタはそのキズの手当てはいいんでさ?」
叩かれたことに動じる事なくダオレは龍生の手を見て淡々と問う。応急処置はしてあるが、それでも止まらない血が滲んでいた。
「これくらい自分でどうにか出来る……シャルラは?」
「頬の傷を治療してもらってまさ」
その言葉に龍生は一瞬だけ不満を露にしたが、直ぐに笑みを浮かべる。
「そう、で……カシラって人は?」
「まだ戻ってません。客間に案内しまさ」
ダオレは淡々と答え、龍生を促す。龍生は屋敷を見上げると、何かを思案したがすぐに答えを導き出したのか何も言わずダオレの後に着いていった。
屋敷の庭には白い椿が存在を示すように美しく咲いている。吹き抜ける風は爽やかに、次の季節を呼んでいた。
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