壱 ここで会ったが何年目?

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  「……龍生?」  ぼーっとしていたのだろう。龍生はシャルラに名前を呼ばれるまで客間にシャルラとダオレが入ってきたことに気づけなかった。 「シャルラ?」  突然の声に驚き、顔を上げると心配そうにシャルラが龍生を見ている。シャルラの頬の傷は跡も残らずに消えていた。  それどころか服も袴ではなく、洋式の真っ赤なドレスを身に纏い心なしか化粧もされている。 「……何その服」 「私の着物は埃まみれだったからここに住んでる女の人に借りたの」 「ふぅん」  あまり関心の無さそうな返事にシャルラは眉を吊り上げた。 「何よ、似合わないとでも言いたいのか?」 「馬子にも衣装でさ」  ヘラヘラと笑うダオレの一言に龍生は笑いを堪えようと口を塞ぐが、抑えきれない笑い声が漏れる。 「……ダオレ。そう言うんだったら理紗さんに私の服を返してって言ってくれる?」 「無理でさ。理紗様が満足されるまではそのままでいてくだせ」  二人の会話に驚きを示して、龍生は立ち上がった。 「理紗が此処にいるのか?」 「なんだ、君は理紗の知り合いか?」  ジアンを引き連れ、三十代程の男が客間に入ってくる。男が動くたびに腰ほどまで伸びた金髪が美しく揺れていた。ひとつに束ねられた髪は絹糸のように細くしなやかで艶やかに輝く。海原に似た深みを帯びた青眼が龍生を見据えていた。  
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