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「あ、カシラ。お帰りなさ」
ダオレが男の姿を確認するとやる気の欠落した表情を崩さないまま気だるい挨拶をすると、怒りをたたえたジアンに無言で叩かれる。
「アズル様。こちら、シャルラ=タオス殿と柳林龍生殿です」
「シャルラに龍生だな。私はアクナ=鈴・ヴィヴィロス。アズルと呼んでくれ」
満面の笑みをシャルラと龍生に向けると、男――アズルは龍生が座っている席の向かい側に座った。
「え、ヴィ……ヴィロス?」
「何故、皇家の方がこんな場所に……!」
シャルラも龍生も“ヴィヴィロス”という言葉に目を見開いて狼狽える。
「まぁ、確かに皇家の人間がこんな吹き溜まりのような場所にいるなんて思わないだろうな。特にヴィヴィロス皇家に仕える君たちは特にね」
笑顔のまま威圧感を放ち、アズルは二人を真っ直ぐに見据えた。皇家に仕える身の立場である二人は、言葉を紡げないまま息を呑む。それは幼い頃から仕込まれたものであり、そうそう変えられるものではない。
「私もヴィヴィロスを名乗ってはいるが、立場上は君達以下の存在だ。そう固くならず、普通に話してくれ」
二人の心中を知ってか知らずか、アズルはそう言って微笑んだ。
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