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「アズル様。何故、理紗がここにいるんですか?」
険しい表情で声を搾りだし、龍生は意を決して言葉を紡ぐ。
「……柳林家の跡取りならば理紗を知っていて当然か。彼女は薬惑いの対策を練るため自ら此処に出向いた。残念なことだが、この街は実験場なんだよ」
頭を抱えるかのように項垂れ、アズルは虚空を睨む。そこには様々な感情が入り交じっているようでシャルラはその場の雰囲気に息を飲んだ。
「実験場……? まさかアンタたちがあの薬を作ってるのか?」
怒りを露に龍生が声を張り上げる。そこに先ほどまでアズルに萎縮していた龍生の姿は何処にもなかった。
「違う。誰が作りばら蒔いているかはまだ分からないが、奴らは私がこの街の元締めと知っているからこそこの街を実験場に選んでいる」
「わざと選んでいる……ってこと? ……ですか?」
「君たちは客人だ。無理に敬語は使わなくていい」
苛立ちを露にしている龍生とは異なり、未だに戸惑いを隠しきれないシャルラ。そんな二人を見比べ、アズルは笑い声を漏らす。
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