壱 ここで会ったが何年目?

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  「桃の家紋……! て、てめえ。タオス家の?」  冷ややかな視線を男へと向けると静かに呼吸を繰り返す少女。まるで人間らしい感情が消え失せたかのような臙脂色の瞳に、男は更に焦りを強めた。  その黒みを帯びた紅色は、とある一族特有の色だからだ。 「そう。タオス家だから、お前は私から逃げられはしない。大人しく斬り捨てられるか、私を見逃すか選べ」  タオス家。それはこの国の軍閥として名高い一族であり、この国の秩序を護る為に日々鍛練を惜しまない武道の達人の集まりである。  それに気付いた途端、男の顔色は見る間に悪くなり後退りを始めた。光る剣先を男へと向けて、少女は冷たく笑う。  国の秩序を護ると一口で言ってはみても、それは決して生易しいものではない。半ば恐怖政治に近いものをもって、厳しく取り締まるのだ。  そんなタオス家の悪評は尾びれをつけて広まっている。彼らは家の教えに従って淡々と任務をこなしているだけなのだが、その様子を見た者は口々に『タオス家は人を人とも思わない』と言わしめる。 「ちょっと君。怖がらせてどうするの? そもそも僕の目の前で流血沙汰はやめてほしいんだけど」  そんなことを知ってか知らずか少年はにっこりと笑顔を少女に向けた。  
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