壱 ここで会ったが何年目?

6/33

19人が本棚に入れています
本棚に追加
/33ページ
  「で、君はあのおっさんを“外れ”と称した。ということはつまり、君の本命は別にいるってことでしょ?」  心から楽しそうに話す少年を更に睨み付け、少女は再び溜め息を漏らす。 「……ご名答。だがこれは遊びじゃない。ついてくるな」  少女が歩き出すと、それを追って少年も足を進ませた。苛立ちを露に少女は足を早める。  少年も負けじと駆け出し、少女はそれを横目に舌打ちを溢した。刀に手を添えて走り出すと、先ほど男に追われていた時のように全速力で逃げようとする。 「ついてくるなと言っているだろう!」  それでも自らの後についてくる少年に対して、少女は怒鳴り声を上げた。それが彼女の体力を根こそぎ奪ったのだろう。少女は脱力感に負けてへたりこんだ。  少女の横に立つ少年は息も切らさず、笑顔のまま。 「残念。身体を動かすのは嫌いだけど、持久力はあるんだよね」 「そういう、問題じゃ……ない」 「ついてくるなって言われたら、ついていきたくなるのがヒトの性(さが)ってもんだと思うよ?」  息も絶え絶えの少女は乾く喉に苦痛を覚えながらも、憎まれ口を紡ごうと息を飲みながら少年を睨み付けた。  少年は白々しく笑いながら少女に手を差し伸べる。 「僕、龍生(りゅうせい)って言うんだ。君は? 何タオスさん?」 「……シャル、ラ。シャルラ=タオス」  少女――シャルラが自らの手をとったのを確認すると、力強く引き上げた。  
/33ページ

最初のコメントを投稿しよう!

19人が本棚に入れています
本棚に追加