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「で、君はあのおっさんを“外れ”と称した。ということはつまり、君の本命は別にいるってことでしょ?」
心から楽しそうに話す少年を更に睨み付け、少女は再び溜め息を漏らす。
「……ご名答。だがこれは遊びじゃない。ついてくるな」
少女が歩き出すと、それを追って少年も足を進ませた。苛立ちを露に少女は足を早める。
少年も負けじと駆け出し、少女はそれを横目に舌打ちを溢した。刀に手を添えて走り出すと、先ほど男に追われていた時のように全速力で逃げようとする。
「ついてくるなと言っているだろう!」
それでも自らの後についてくる少年に対して、少女は怒鳴り声を上げた。それが彼女の体力を根こそぎ奪ったのだろう。少女は脱力感に負けてへたりこんだ。
少女の横に立つ少年は息も切らさず、笑顔のまま。
「残念。身体を動かすのは嫌いだけど、持久力はあるんだよね」
「そういう、問題じゃ……ない」
「ついてくるなって言われたら、ついていきたくなるのがヒトの性(さが)ってもんだと思うよ?」
息も絶え絶えの少女は乾く喉に苦痛を覚えながらも、憎まれ口を紡ごうと息を飲みながら少年を睨み付けた。
少年は白々しく笑いながら少女に手を差し伸べる。
「僕、龍生(りゅうせい)って言うんだ。君は? 何タオスさん?」
「……シャル、ラ。シャルラ=タオス」
少女――シャルラが自らの手をとったのを確認すると、力強く引き上げた。
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