壱 ここで会ったが何年目?

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   赤煉瓦が敷き詰められ、小綺麗に整備された道を歩く二人。路の傍らには途切れ途切れに低い街路樹が植えられていた。  その道に添うように建てられた店たちは多様な国々の装いが施されている。  この国はほんの少し前まで国を閉じ、独自の文化を数百年にも渡って発展させていた。近年の産業革命により他国の技術が向上し、異邦人がこの国に訪れるようになってからは様々な文化がごちゃ混ぜとなってしまう。  その影響がこの景色だった。 「この辺はもう趣も何もなくなってるね」 「仕方がないだろう。もう開国してしまったのだから。過ぎ去ったことをとやかく言うなど、無意味にもほどがある。これからどうするかが課題だ」  異国の店が並ぶ中、ただ一棟だけ日本家屋がそびえる。渋い色味の旗や看板を見ると、その店が茶屋であると分かった。 「へー、シャルラは前向きだねぇ」 「気安く呼び捨てにするな。これくらい考えないでどうする。タオスは国を守るのが仕事だ」  シャルラは店の前で立ち止まると、大きく溜め息を漏らす。 「おや、シャルラ嬢。お帰りなさいませ」  暖簾を潜って出てきた男はシャルラを見るなり、深々と頭を下げた。その男はシャルラや龍生よりも歳上で、三十代半ばなのだろうと龍生は考える。  男が肩ほどまでに伸ばした赤茶色の髪を一つに束ね直し、夕陽色の眼で龍生を睨み付けた。  
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