壱 ここで会ったが何年目?

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  「お嬢。コイツは何者です?」 「客人……コルン。お茶を」 「へい。少々お待ちを」  男は腑に落ちないと言いたげにシャルラを見たが、すぐに溜め息を漏らして店の奥へと引っ込んでいった。店の中は茶屋らしくいくつかの机と椅子が並んではいるが、誰一人として客がいない。  がらんとした店内には、外を行き交う人々の声や音が僅かに響いていた。 「お茶? のんびりするの?」 「そんなわけないでしょう。何処でも好きなとこに座って」  シャルラに促され龍生が近くの席に座ると、二十代半ばの女が店に入ってくる。和服をしっかりと着こんだ彼女の手には紺の包みが握られていた。女性はシャルラとすれ違う瞬間に微笑むと、龍生の後ろの席に座った。 「どうぞ」  シャルラにお茶を頼まれた男が龍生に茶を出すと、龍生の向かい側にシャルラが座る。 「コルン。あの着物は良くなかったわ」 「そうですか。お嬢の要望に応えられる物は中々無いようで……すみません」  男が申し訳無さそうに話すのを見ながら、龍生は出されたお茶を啜った。シャルラが眉間に皺を寄せて、明らかな不満を表す。 「シャルラちゃんが探している着物なら西宮の繁華街で見たわ」  先ほど入ってきた女がやんわりとした雰囲気で話した。  
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