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「…え、ちょっ…何これ…」
2人の眼下に出てきたソレは、まるで朱色の狐のようだった。
いや、狐8割・犬2割といったところか。
ソレは固く目を閉じながら壇の手を噛み続けている。
…正直、可愛い
そう2人が思った次の瞬間、キエラの両腕がソレを抱き締めていた。
「可愛いー!!なにこれ、こんなキメラ初めて見たわ!!」
「いでででで!!ばっ、まだ噛まれてんですけど!!」
「成功って事よね!?凄いわ暁!!」
バシバシと片手で壇の背中を叩くキエラの顔は喜びで満ちている。
…叩かれる壇の顔は痛みで歪んでいるが。
「ほら、恐くないですよー!
そいつの手なんか噛んでたらばい菌入りますよー」
「さり気なくけなしてんじゃねぇ!!」
人間の言葉を理解するのか、はたまた偶然なのか。
ソレはキエラの声にピクッと反応すると、おずおずと口を離す。
そしてこれまた怯えながらゆっくりと目を開けた。
「いってー…おい、いくら恐かったからってやっていい事と悪い事が…」
ソレの丸い潤んだ目にまず映ったのは、傷口を顔をひきつらせながら見る壇の姿。
その次に映ったのは、キラキラした目で見つめてくるキエラの姿だった。
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