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「で、雨宮さんはいったい何してんの?」
ヒロⅢ世が秋刀魚の試食をもう一つ頬張りながら尋ねる。
「うん、雨宮の“お姉さん”はね、ここで万引き起きないか見回ってるの」
“お姉さん”をやけに強調して返事する雨宮。
「へぇ、お姉さん(笑)は万引き起きないか見てるんですか。じゃあ俺も手伝いますよ、お姉さん(笑)」
「(笑)って何だよオイ。なんかムカつくんだけど」
「あ、お姉さん(笑)!あの人怪しいですよ」
雨宮の怒りの表情をよそに、ヒロは冷凍食品コーナーにいる男の子を指差した。
遠くてよく見えないが、服装や立ち振る舞いから察するに、あれは男だ。
「たしかに怪しいわね。周りを見ながら、ずっとあの辺をうろついてるわ」
ギ●ン・ザビ並の低音で話す。
「どうします?捕まえますか?」
「ダメよ。まだ万引きが成立してないわ。捕まえるのは、彼が商品を取ってレジに行かずに外へ出てから」
二人はじっとその時を待った。
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