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夏。
ここが田舎な分、ヒートアイランド減少が起きない上に、県北だから比較的涼しいのだが、それでも暑い。 産まれてこの方15年、この村で彼は過ごして来たから彼はこれ以上の暑さを知らない。 故に充分暑い。
暑くても夏休みはまだ来ていない。 学校はあるので学校に行く。 しかし、冷房施設などは存在しないため、暑くて集中出来ない。 村の人口が少ないため、一学年4人程しか居ないので、部屋の人口密度が低いため、普通より涼しい筈だがそれでも暑い。
「んでこんなに暑ィんだよ……。」
文句を言うのは彼--、勝山 繁。 読みはかつやま しげる。
「まーた、文句ばっかり。 声に出すと余計暑いわよ。」
「声に出そうが出さまいが暑ィもんわ暑ィ。」
「もー。」
繁を一喝したのは津楽 愛。 振り仮名はつら あい。 繁と同学年であり、隣の家に住む少女である。
「それに! こっちまで暑くなるでしょ! 今朝だってアンタの部屋から何回「暑ィ」が聞こえたか。」
プリプリと怒りを見せる愛。
「まぁまぁ愛ちゃんよぉ。 あんまり怒ると逆に暑くなんぜ?」
愛をなだめるのは、同じく繁の同級生である十文字 徹。 読みはじゅうもんじ てつ。 同じ高1とは思えない身長を持ち、更にクラス1のしっかり者。 そして何の影響を受けたか、やたらとハードボイルドな男である。
「そうだそうだ。 もっと言ってやれ!」
「繁もだ。 あんましうだうだ言うんじゃねぇよ。 暑さぐらいで文句ばっかり言ってたら男が廃るぜ。」
しっかりした性格からか、徹はクラスの父親役も買って出ている。
「つーかよ。 アイツは今日何処行ってんだ?」
「アイツはいつも通り……行方不明だな。」
アイツ--このクラスのもう一人の仲間、旅笠 要のことである。 読みはたびかさ かなめ。
何時も気が付いたら煙のように行方不明になっており、既に出席日数が足りていない男である。 その割には学力やIQが非常に高く、誰もが舌を巻く知恵袋でもあった。
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