交錯する運命

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ーーーーーー…… 「……くそっ」 暗闇の中で、毒づく声がした。 とはいっても、他に人気の無い今の時間帯の商店街で、この声を聞くものはおらず、ただ虚しく冷たい風がなびくだけだが。 だが、その声を出した仮面の男は、微塵も気にするしぐさも見せず、自身のコートを握り、、飛ばされないようにしながらも、とある喫茶店の前に立ち尽くしていた。 しばしの沈黙の後、意を決したように喫茶店の扉に手をかけ、開くと同時に自分の仮面を剥がし、中に放り投げる。 だが、仮面が下に落ちる音は、いつまで経っても響かない。その代わりに…… 「おかえり」 いつもと変わらない言葉が、辺りに響いた。一般家庭にでも、どこにでもあるような、待ってる側の温かい言葉。 だが、そんなものは“彼”には必要がない。 「……どういうつもりだ」 「何のこと?」 「とぼけんな。知ってたんだろ?」 鈴の言葉をもろともせず、緋音は結論を焦るように、動揺を何かで装うように息を吸った後、 「真が騎士団の人間で、今日俺と出会う可能性があることを、てめぇは知ってたんだろ?」 何かを求めるような瞳で、緋音は問う。 だが鈴は、それに対して何も動じることはなく、ただ一言、告げた。 「そうね」 「……何のつもりだ?」 「仮面はあげたでしょ。だから正体もバレない。これで騎士団とも安心してーー」 「そうじゃねぇ!!」 緋音が、鈴の言葉を遮るように言い放ち、その胸倉を掴み、持ち上げる。 そして、小さく、呟くように言った。 「……なんで、俺とアイツを、巡り会わせたかって聞いてんだ」 蚊の鳴くように細く、そして悲しみを全て詰め込んだように聞こえるその声は、静かに暗闇の中に響いた。
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