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「…………何のこと?」
「……ふざけてんじゃねぇ。てめぇが転校先の俺と同じクラスの奴の情報を調べてねぇはずは無いだろうが……!!」
歯ぎしりの音が強くなり、仮面の中から睨み殺すかのような目線が鈴を捕らえる。
「騎士団の新米だぁ?んなもん常識的に考えて、“成人にもなっていない、高校生の奴なんかになれるはずがない”だろうが……。
どうせ、真の両親のどちらかが騎士団の高い地位にいたから裏で特例が認められたとかそういう理由だろ?
普通ならどれだけ才能を持った奴がいても、年齢の関係で騎士団入団の選考からは落とされる……10年前、確かに俺はそう聞いたからなぁ」
それが誰かという問いは、鈴の口からは発せられなかった。彼女は知っている可能性は高かったが、だから聞かなかったというわけではないだろう。
わざわざ掘り返すようなことでも、再び口に出すようなことでもないからだ。
緋音は、続ける。
「アイツの生い立ちや家族関係、今から何をしようとしているかとかは聞く気もねぇ。興味もねぇ。だがなぁ……」
息を吸って、目を見開き、奥歯を本気で噛み潰しながら、
「事前にその情報を仕入れてたはずのてめぇなら!アイツと違うクラスに操作することだって容易なはずだろうが!!そうすりゃ俺とアイツを会わせることもしないですんだだろうが!!それなのになんでわざわざ俺と出会わせるような真似をしやがった!!真だけじゃねぇ!!1ー2の連中も!俺みたいなクズと出会わせてーー」
血管が切れるかと思えるほど、彼の頭には血が登っていた。
だが、それでも彼は落ち着こうともせず、ただ、声で殴りつけるように、
「何の罪もないアイツらの未来を潰す権利が、俺やてめぇにあるとでも思ってんのか!!」
ドンと、怒りを無理矢理抑えたような力が、鈴を突き飛ばし、二人に微妙な距離ができる。
だが、その直後。少し息が荒くなっている緋音に対して、鈴は特に怯える様子もなく、小さく一言告げた。
「……優しいわね。あんたはさ」
女性特有の柔らかい声だった。だが、緋音がそれに驚きを見せる前に、その声色は一瞬でなくなり、「でもさぁ」と、冷めた声がした。
「情が移ったのかは知らない。でも……一つ教えてあげるわ」
「あ?」
「あんたは殺人を犯すべき人間ではない」
ズキン、と、緋音の中の何かに傷がつく。
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