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「……ま、でも考えられた作戦だったぜ?
様々な動きをする無数の矢を連続で放ち、相手の集中をそっちに向ける。その隙に『風』を使って、遠くに落ちていた黒龍刀を、身動き出来ない俺のところへ持ってくる……いい判断じゃねぇか」
「ていうか、あんたも魔物の首を切るなら切るで、最初にやっておきなさいよ。腹を貫く余裕があるなら出来たでしょ!?」
「普通は出血多量、骨盤破壊で動けるどころか死んでるはずのところを貫いたんだ。まさかまだ動けるとは思わねぇだろ」
神崎の溜め息混じりの疑問に、ただ愚痴るように答えた緋音だったが、そこで今まで黙って傍観していた紫苑が口を開いた。
「……問題はそこだな」
「?そこ…って……どういうこと~?」
「……二見、いちいちいらいらさせる奴だな。つまり、赤い首輪の効果のことだ」
未来の半分ぼやけたような声を聞いて、少々むかつきを示した紫苑だったが、文句を言う前にパソコンのキーを叩き、メガネをクイッと上に上げた。
「お前達が倒した魔物がつけていた、赤い首輪。どうやら魔物を凶暴化させる効果だけではないらしい。最低限の知能や、それに対する洗脳。更には、動けないはずの魔物の体を、無理矢理にでも動かす効果を生み出している。まるでゾンビのようにな」
紫苑は黙って話しを聞いている部員達の顔をザッと見て、「それにしても」と呟くと、
「この首輪を作った奴はかなり科学方面の技術、知識に長けているようだ。
ここまで高性能な電波を発する機械は初めてみた。
魔力が中心となったこの社会で、この高レベルな技術。感心せざるをえないな」
「その技術の使い方が真っ当なものなら、素直に尊敬できるんだがな」
緋音は皮肉混じりにそう言ったが、紫苑は対して気にもせず、ビニール袋に入れてある赤い首輪の残骸を見て、
「これは僕が預かり、調べておく。橘鈴にだけいい格好をさせておくわけにはいかないからな。
それよりもうそろそろお前達の顧問が来るんじゃないのか?」
そう、言った瞬間、「おーい」という言葉とともに、ギルド部顧問の西園寺が学園の側から走ってくるのが見えた。
どうやら実験中だったらしく、研究服のまま彼らのところまで辿り着くと、すぐに叫び出した。
「君達!!勝手に危険な依頼を受けちゃダメじゃないか!」
何やらすごい怒っていた。元が優しい気弱な顔のせいか、緋音達にその怒りはあまり伝わって来ないが。
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