事件の予兆、怪しげな異変

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「勝手にって……ちゃんと依頼を受けたって報告書は出しただろ?」 「承認した覚えはないけどね!!」 「成功したからいいじゃない、先生」 「そういう問題じゃなくて!!Aクラスの魔物討伐なんて学校側は認めてないんだって!」 神崎はそれを聞いてもヘラヘラと笑い飛ばすだけだが、西園寺の方は結構マジメらしく、必死にその危険性を伝えようとしている。 ……だが、今そんな危険性を教えても、実際に魔物と対峙している彼らには、ハッキリ言ってムダだろう。 西園寺がそれに気づくのは、それから10分後になるのだが…… 「な~先生。この街って魔物から身を守るために結界張ってあるんだよな?」 「ん?どうしたんだい突然?」 西園寺の説教が終わった後、九名は依頼人に報酬をもらってから、学校への帰り道をポツポツと歩いていた。 突然の質問に、西園寺はひとまず首を傾げる。 「いや、なんとなく疑問に思って。だってさ、街を包んでる結界なんだろ?だったら街から街へ移動する時とかどうすんだよ。移動途中に魔物に襲われるじゃん」 「いや、その心配はないよ。ちゃんと街から街を繋ぐ正式な道にも、魔力や電力を使われた結界を張ってある。 だから、普通に生きていれば魔物に会うことはない。 魔物を見ることもなく、一生を終える人々も少なくはないだろうね」 ふーん、と納得しかけた平井だが、その途中、何か引っかかったような表情をすると、 「んじゃ、さっき俺らが魔物を倒した場所は?あそこは確か結界張られてたんじゃなかったっけ?」 「うん……以前まではね。ただ、最近になって結界を作る魔力、電力が少なくなったせいで、街の隅まで結界が届かなくなり……あそこは廃墟となって、同時に魔物の巣窟にもなった。それ以来あの一帯、住んでる人もいなくなったらしいし」 深刻そうな、そして残念そうな西園寺のその表情を見て、一同は黙ってしまい、その沈黙を保ったまま、その日は皆自分の家に帰ることとなった。 ……ある一人を除いて。
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