1349人が本棚に入れています
本棚に追加
これは、なんだ。
真は心の中だけで、自嘲気味に笑った。
(……緋音達と長く居すぎた。たった、それだけのこと。それだけのことで、こんなにもいつもの『当たり前』のことが、心に突き刺さるのか)
違う、彼らが特別過ぎたのだ。ただそれだけのことに、自分は甘えていたのだと、彼は考え直した。
自分で自分を嘲り、真は自分の中で勝手に結論付け、目の前の騎士を見て、『当たり前』のことを思い出して、無理矢理笑顔を作って、先輩騎士を見る。
『優等生』の笑顔で。
だが、その直後、すぐ近くにあった屋敷から飛び出した、大きな爆発が、その笑顔を遮るように音を鳴らした。
ーーーー*ーーーーー
「……N…NO…」
屋敷に広がる、ドスッという鈍い音。その音とともに、外人と思われる顔つきをした男性はカーペットの上に力無く落ちた。
腹を突かれ、そこから一気に刃を引き抜かれたために、出血の量は相当なもので、カーペットの上には、ドンドン赤い染みが広がっていっている。
その血まみれになった指に挟まれている万年筆を見て、『仮面をかぶった暗殺者』は、ため息まじりに舌打ちした。
(……まさかこいつの武器が万年筆で、爆発系の能力だったとはな……。油断した。騎士団が来る可能性を考えるとちと厄介だし、サッサと仕事を終わらせるのが先決か)
だが、と。暗殺者は刀を黒い鞘にしまいながらも思考を続ける。
(騎士団っつっても所詮は烏合の衆だ。
強制調査権限だのなんだので、どうせ爆発に気づいたとしても、来るのに結構な時間は必要だし、今の国の上層部は金絡みのことに対してしか動かねぇ。
市民の安全とかには一切目を向けず、自分の利益にしか興味がない奴らだ。
何より規律を破ってまで市民の安全のために首突っ込んでくる馬鹿なんて、今の時代存在するハズもねぇからな)
だから、騎士団が来る可能性といっても特に焦ることはない、と結論を構え、暗殺者は先ほど息絶えた外人の物と思われる机の中を漁りだし、その中からスペースいっぱいに文がかかれたレポート用紙を何枚か取り出した。
それらをコートのポケットにしまった暗殺者は、次に、腰にかけてある赤い鞘から、通常の長さより少し長い、赤い刀身の刀と、同じく腰にかかってある青い鞘から、通常より少し短い、青い刀身の刀を両手におさめた。
最初のコメントを投稿しよう!