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低く、薄暗い声。
無論、地声ではないだろう。この男が作った声。
演劇の役者や、テレビの声優などがよく使う擬声……つまり、元々の声色ではない声だろう。
真はそれを認識しながらも、気にせず“虎光剣”に力を加え、
「ぅああああああっっ!!」
少量の余波とともに、暗殺者の体ごと吹き飛ばす。
ドゴン!!という音とともに、壁に亀裂が入ると同時にヘコみ、男はそこに叩きつけられる。
が、真は容赦しない。
「“光撃線”!!」
ドン!!と突き出された西洋剣の先端から、太陽光が凝縮されたような閃光が発射される。
無論、狙いはただ一人。
「一瞬だけなら……」
狙われた男は、誰にも聞こえない程度にボソッと呟き、左手の刀に、“一瞬だけ”魔力を加えた。
「!!?」
見えたのはかすかな動き。戦闘の経験を見せつけるように、暗殺者は真の放った光線を、刀のひとふりで叩ききった。
直後、唖然とした真だったが、手は緩めない。
「だあああああっ!!!!」
「………………」
光と闇の剣撃が乱れ飛び、お互いの刃から火花を散らす。
最初は、向かいくる真の刃を受ける体制にあった暗殺者の側だったが、あっという間に互角まで立ち回っていく。
「どうした?この程度か新米騎士」
「……っ!」
切り返しでは、重量の関係で、刀の方が西洋剣よりも立ち回り易いというのが剣術の定石。だが、暗殺者の刀はそれだけではなかった。
(刃が……重いっ!叩く力や、力の押し合いでは西洋剣の方が有利なはずなのに……っ!!)
「終わりだ」
その時、勝負は決まった。真が力に押された瞬間、西洋剣が弾かれ、彼の首に、暗闇に覆われた刀が突きつけられたのだ。
「…………っ」
「仮にも正義を語ってる騎士が、人の死を目の当たりにして暴走してんじゃねぇよ」
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