出会いはその瞬間から(最終回:後編)

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あの時冷たく突き放してしまった…。 浩志を悲しませないと誓っていたはずなのに悲しませてしまった…。 このまま浩志を帰していいのか…? 何も伝えず、俺のそばからただ黙って離れて行くのを見てるだけなのか…? 「そんなの…」 嫌に決まってる! 椅子から立ち上がると部屋を出て行く。 時計の針は40分を指していた。 俺は…いつも逃げてばかりだった…。 悲しいとき、辛いときはいつも自分の気持ちに蓋をしていた。 でも、今回は違う。 蓋をしたら何もかも終わってしまいそうな感じがした… 気持ちを伝えないより伝えることのほうがどれだけ安心するのか今わかった…。 初めからそうすれば良かったのに… いつも、気づくのが遅すぎる。 いつも、浩志から言われて気づく。 いつも… いつも、浩志から言うのを待っていた。 でも、それじゃいけない。 皆が言ったように自分から動かなきゃ何も始まらないんだ。 車で向かうのが億劫で走って駅へと向かう。 「浩志…!」 「ひろしぃ…ふぇ…元気でねぇ…」 「うん…よっちゃんも元気でね。」 涙を流すよっちゃんを抱きしめながら俺も涙ぐむ。 皆見送りに来てくれて、出発するまでまだまだ時間があるためこうして皆と最後の言葉を交わしている。 「あ…あの!」 突然、満の声が聞こえ横を向けば照れくさい顔で眼鏡を中指で押し上げてる満が目に入る。 「こ…この前は…悪かったですね…」 「この前?」 忘れているのか聞き返してくるよっちゃんに恥ずかしくなったのか満の顔が赤くなる。 「だ…だからぁ!浩志兄さんがいなくなるなんて言って…その…悪かった…って言ってるんです。」 素直じゃない満によっちゃんは微笑む。 「いいよ♪気にしてないよ♪」 明るいよっちゃんの声に一瞬満は動揺するも冷静さをとりつくろう。 「ふ、ふん。まぁ…いいですが…」 「うん♪」 明るく笑うよっちゃんと照れてる満の光景が微笑ましい。
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