出会いはその瞬間から(最終回:後編)

35/41
前へ
/911ページ
次へ
「元気でな。手紙よこしてくれ。返事由也と書くから。」 「うん。」 そばにいた雅史君に声をかけられ、雅史君の言葉に頷く。 「本当にありがとう。」 「僕達も皆元気でやっていくから心配しないでね。」 雅史君にお礼を言えば、雅史君の隣にいた碧君が話しかける。 「うん。お願いね、碧君。」 「任せてよ!」 若干の不安はあるものの俺がいなくなった倉庫で唯一料理を作れるのは碧君しかいない。 「遥来れねぇのすげぇ悔しがってた。だから遥の分も挨拶する。ありがとな、浩志。」 「こちらこそ。」 ぶっきらぼうに話すヨシに微笑みかけると互いに握手を交わす。 ヨシとは最初は最悪であれど、本当にいい奴だったって今は心から思える。 「サッカーの試合があったら俺、チケット浩志に送る。うざくなるくらい毎回。だから、観に来てくれよ。」 「うん。瑞紀君も怪我しないでサッカー頑張ってね。」 「浩志も元気でな!」 瑞紀君と握手を交わし互いに微笑み合う。 「浩志君。そろそろ電車に乗ろうか。」 父さんが後ろから声をかけ、駅の時計を見ればそろそろ出発の時間になる…。 「そう…ですね…。それじゃあ、皆……元気でね…。」 精一杯笑顔を見せ、皆に手を振る。 「ふえぇ…ひろしぃ…」 よっちゃんの泣き顔が目に入る。 あぁ…そんなに悲しまないで… 行くのが嫌になる… 「由也。笑顔で浩志を見送るんだ。昨日も言っていただろう?」 雅史君の言葉にグズグズと鼻を鳴らしながらも精一杯よっちゃんは笑顔を見せる。 涙で濡れて悲しいのかなんなのか分からないその笑顔に俺も涙が出そうになるのをこらえて笑顔で手を振る。 父さんと母さん、満が乗り俺もその列に連れて電車に乗り込もうとする。 「じゃあね。皆…「浩志!!!」 笑顔を見せようと後ろを振り向いた瞬間、ホームに響き渡るくらいでかい声で名前を呼ばれる。 その方を見て、目を見開く…。 来るはずないと思っていた勇弥が息を切らしながら確かに駅のホームに立っていたから…。
/911ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2543人が本棚に入れています
本棚に追加