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「ゆ…や…」
「「勇弥!?」」
俺の声より皆の驚いた声がホームに響き渡る。
道行く人が俺達を横目で見ていく。
少し注目の的になっている…ι
「浩志…」
勇弥が俺の元に歩み寄ってくる。
「ゆ…や…ど、して…」
俺を母さん達の元に帰して、自分の気持ちを伝えても返事をよこさない勇弥が今駅にいることに頭が混乱する。
もう来ないと思っていたのに…
「浩志。戻って来い。」
「ゆ…や…」
「行くな。」
どこか必死な勇弥の表情に心を打たれる。
でも…
「で…できるかよ!な…なんだよ!今さら!…俺のこと帰しておいて自分のとこに帰って来いって…訳わかんないよ…」
涙が溢れてくる。
目の前にいる勇弥に見せたくなくて顔をうつむかせて涙を拭う。
「確かに…勝手だな…。だけど、気づいたんだ。お前をこのまま返して自分の気が収まらないことに。お前が誰よりも大切なんだ。」
顔を上げれば真剣な勇弥の表情にドキッと胸が鳴る…。
だ…ダメだ…流されちゃ…だって…
「嘘だ。じゃあ、なんで俺の気持ちに返事くれなかったんだよ?」
涙もだいぶ収まり、一息ついて勇弥を睨む。
「あのときは返事をしないほうが…お前を親の元に返すことが最善だとばかり思っていた。自分の気持ちに嘘をついて蓋をした。だが、もう迷わない。自分に正直になる。浩志、帰って来い。」
優しい笑顔で手を差し伸べる勇弥に、ふいとそっぽを向く。
「浩志?」
『間もなく、電車が発車致します。危ないですので黄色い線までお下がり下さい。』
ホームにアナウンスが響き渡る。
そろそろ発車の時間になる…。
だが、目の前にいる浩志は口を開かないどころか背を向けてしまった…。
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