番外編:新米刑事の受難シリーズ①

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『事件の種類に、警官も刑事も関係ねぇだろ。』 「この度、刑事として新しく配属されました澤枝楓(さわえだ かえで)です!よろしくお願いします!」 新しい職場での掴みは上々。この日のために挨拶を練習したんだから! って、今日この日に思えたらどれだけ幸せだったか… 「あれ…?」 鳴り響く電話とそれに応対している人達。 忙しく職場を後にしていく人達。 初めての職場。 これから先のことに不安を感じた今日この頃。 掴みどころか反応も全くなし。 自分の席に座りため息をはく。 「挨拶が肝心って言われてたのに…」 警察学校、親にも耳にタコができるくらい言われた。 挨拶には自信があったから、今日この日自分は皆と仲良くなれて今後の仕事も楽しくできると思っていたのに… 「………ぇ…で。………澤枝楓!!」 「は、はひぃ!?」 課長のでかい声がオフィスに響き渡る。 すっとんきょんな声を上げて立ち上がる楓に課長はため息を一つはくと手招きをする。 「な…なんですか…?」 ビクビクしながら問えば、課長の顔が険しくなる。 「お前はまだ新米だ。」 「え?あ、はい…。そうですが…」 いきなり何を言ってるんだろうか?と首を傾げる。 「新米の刑事に仕事を任せるにはまだ早いから。しばらくは…」 「おっす。はよ。」 ちょうどそこにあくびをしながら大絹が入ってくる。 「大絹に指導をしてもらう。」 「ふあ?」 課長が勢いよく指差す先にはあくびをして訳が分からないといった表情でこちらをみている大絹の姿があった。 「ほ、本当ですか!?」 「あぁ。なんだ?嬉しそうだな?」 「いえ…そんな…」 嫌がるかと思っていたら目を輝かせ明らかに喜んでいる楓に問えば、言葉を濁して否定した。 でも、本当は楓は嬉しかった。 それは、楓の中に大絹に対する深い想いがあったからだ…。
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