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『あんた刑事なんだろ?』
『ん?そうだが…』
『俺らみたいなのに構ってていいのかよ?他に大事な事件があるのによ。』
バカにしたように言えば、刑事が缶コーヒーを飲むのを中断するのが見える。
本当のこと言われて傷ついたか…?
ならばいい。これ以上俺達に構わなくなるから…
『そうだな。』
『え?』
そう思っていたらあっさりと認めた刑事に予想してなかった返事に言葉を失う。
『確かに、俺が加わることじゃない。お前みたいな奴らたくさんいるし。』
『………………』
『でもな、そういう奴らを野放しにしてはいけない。小さなことでも摘んでおかなきゃならないだろ。』
『なんで…。あんたは刑事でこんなの警察がやることだろ…?』
だらしない格好をしているのに、その時話した刑事の顔はどんな奴よりカッコ良く輝いて見えた。
『事件の種類に刑事も警察も関係ねぇよ。それで、お前らみたいなのが犯罪にいかないでくれるなら俺はどんなことだろうがやるさ。』
『あんたに関係ないじゃんか…家族でもないのに…』
『家族だよ。ここに住んでる奴ら皆、俺の家族だ。だから放っておけない。お前もその一人さ。』
そう言って気さくな笑顔で頭を不器用に撫でる刑事の言葉に胸が何かで打たれたかのように衝撃が走った。
今まで必要とされてなかった…見放されてきていた俺を暖かい目で家族だと言ってくれた人初めてだったから…
『…………』
一筋の涙が頬を伝う。
『お前に何かあったのかは聞かない。聞いて晴れるもんじゃないからな。でも、嫌なことがあっても決して逃げるな。悪になったところで何も解決しない。』
『…………はい。』
はいと言う素直な返事をすごく久しぶりに使った。
落ちぶれてから素直になったことなんかなかった…
皆奇怪な眼差しで見てたから…
無性に腹が立っていた…
でも、俺の目の前にいる男は奇怪な眼差しを向けるどころか俺を暖かく包んでくれている。
俺と真正面から向き合ってくれている。
今まで孤独だった俺が唯一望んでいたこと…
嬉しさのあまり涙がとめどなく溢れてきて…しばらく泣いてしまった。
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