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迎えに来たのは両親でなく兄だった。
『あらら~。補導ってのは親が来なきゃ返せねぇんだけどな。』
『すみません。どちらも仕事なもので…』
刑事の言葉に深々と頭を下げる兄。
嫌みかのごとく兄を差し出す両親に本当に嫌気が差してくる。
『ほらな。やっぱり…親なんか…』
分かってはいてもチクリと胸が痛む。
顔をうつむかせていると額に軽くデコピンをくらわせられた。
顔を上げれば兄がいた。
『バカヤロ!俺はすごく心配したんだぞ!』
『あに…き…』
『確かにお前が親に不満を持つのは分かるけどなぁ!俺はいつもいつも…お前が心配だったんだ…。だった一人の弟なんだぞ。』
『あに…き…』
俺を抱きしめる兄の腕が強くて、そこから兄の気持ちが伝わってくるような感じがした。
兄は親と違って俺を何かと気にかけてくれて仲良く遊んでくれていた。
普通の兄弟みたいに。
兄は悪い人ではない。
俺を一番に考えてくれていた人なのに…
そんな人を俺は傷つけていたのかと改めて思い知らされ、涙が溢れてきた。
兄も同じく涙を流しているのか、小さい鳴咽が聞こえた。
『もう兄ちゃんに心配かけさせんなよ。』
泣き止んだ俺達に刑事が声をかけてくる。
その目は暖かくて…
『ありがとう…刑事さん…』
『俺は大絹ってんだ。ま、俺に不満があんなら追いかけてこい。受けて立つから。』
『はは。なんだそれ…』
お礼を言えば、冗談を交えた言葉に笑みがこぼれる。
大絹刑事…
その名前を覚えておこうと思った…。
それと同時に俺の将来の夢が決まった…
刑事になりたい!
大絹刑事と出会った後、俺は不良仲間とつるむのを止めた。
止めるのにゴタゴタはあったが、キッパリと手を打つことができた。
変わった俺を見て欲しい…
もう一度大絹さんに会いたくて一生懸命勉強した。
そして今の俺がいる。
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