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変わった俺を見て喜んだ顔が見たかったのに…
「はぁ…結果があれじゃあなぁ…」
今後の仕事にやる気が起きない。
飲み終わったバナナミルクをゴミ箱に捨てるとタバコを吸っている渡辺にじゃあなと手を振る。
「お。もう行くのか?」
「お前は後から入ったからまだあるだろ。俺の休憩時間は終わりお互い頑張ろーぜ。」
「おう。」
渡辺の吸っているタバコの煙から逃れたかったのも一理あるが…
仕事場に戻れば、大絹さんが何やら書類を眺めていた。
「ただいま戻りました!」
「おう。」
「仕事…何しましょう?」
「あ?あぁー…それより…」
「はい?」
「さっきは…悪かったな…。覚えてなくて…。お前は俺のこと覚えて…こうして刑事になってんのに…」
「大絹さん…」
若干視線をそらしながら先ほどのことを謝る大絹さんからはふざけてる様子もなく…寧ろ本気で反省しているようだった…。
「大絹さん…」
「本当にすまない!」
手を合わせて勢いよく謝る大絹さん。
2人の間にシンと静まり返った静寂が訪れる。
しばらく手を合わせて必死に謝る大絹さんの姿を見つめていたら…
思わずフッと吹き出してしまった。
「あはは!いえ…そんな…大丈夫ですよ!」
「え?でも…」
「随分昔ですからね。覚えてないのも仕方ないのかもしれませんね。」
「楓…ありがとな。」
「はい!」
本気で謝る大絹さんの姿が悲しいよりも嬉しかった。
初めてでも他の人と接する態度で平等に付き合ってくれる。
やっぱり、大絹さんは今まで会ってきた人達より一番いい人た!
と改めて心の中で思った。
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