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「また…か。」
新聞を広げながら、大絹は怪訝な表情をする。
新聞の見出しには、『生き埋め・親父狩り相次ぐ』と書かれていた。
「……………」
「なに見てるんですか?」
ふいに後ろから声をかけられ、振り返れば澤枝が首を傾げていた。
「あ…いや…」
「あ、これって…。最近多いですよね。一体誰がやっているんでしょう?今捜査を行ってる段階ですけど…」
「そうだな。」
犯人の目星はついていると澤枝には教えなかった。
一生懸命な澤枝のことだ。きっとなりふり構わず突っ込んでいくかもしれない…
最悪の場合死に至るかもしれない…
首を一つ横に振ると、新聞をたたみ仕事にとりかかる。
「後は何をしましょう?」
「あー…これ頼む。」
「はい。」
いつものやりとり…。
だが、若干違和感を感じる。
気のせいか澤枝のテンションがいつにも増して高いような…
「なぁ、澤枝。」
「はい。なんでしょう?」
「お前なんかいいことあったか?」
「………え?」
数秒の沈黙が訪れる。
……何かまずいことでも聞いたか…?
「あ…はは。何言ってるんですか!いつも通りです。いいことなんかないですよ。」
「そ…そうか…」
澤枝の話し方がぎこちなくて怪しさを感じたが、あえて突っ込まないことにした。
まぁ…いいことの一つや二つあるしな…
いちいち人に教えるもんじゃないだろうけど…
深く考えるのを止め、仕事を再開する。
書類を整理している大絹の横顔をチラッと見て気にしてないことを確認すると、ホッと胸をなで下ろす。
あ、危なかったあぁ…
そんなに俺って分かりやすいのかな?
いつも通りにしているはずなんだけど…
また再度大絹の横顔を見る。
言ってもいいけど…
でも、解決したら大絹さんに報告するんだ!
それまでは心が痛むけど…黙っておこう…
心の中で謝罪しながら、止まっていた手を動かし仕事にとりかかる。
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