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「最近、いじめてる奴らが近づいてこなくなったんですよ。」
「そっかぁ。それは良かった。」
バナナミルクを飲みながら、待ち合わせした公園のベンチにて健太君の話しを聞いている。
いじめもなくなり、今では楽しく学校に行けているらしい。
「澤枝さんのおかげです。ありがとうございます。」
「いーえ。」
健太君の笑顔を見てホッと胸をなで下ろす。
と、ふと、大絹さんと会っていたあの日のことが頭をよぎる。
「そういえば…」
「はい?」
「大絹って刑事さんと話していたけど、何を話していたの?」
俺の問いに顔をうつむいてしまった健太君に悪いこと聞いたかなと思っていると健太君が顔を上げる。
「澤枝さんと同じように僕のことを心配してくれていたんです。大絹さん優しいですから。」
「あ…そ、そうなんだぁー♪」
やっぱり大絹さんはいい人なんだと改めて心の中で憧れの大絹さん像を膨らませていく。
「はい。あ、澤枝さんって大絹さんとどういうご関係なんですか?」
答えたくないならいいですよと遠慮している健太君に、関係くらいなら話してもいいよなと思い大丈夫だよと笑顔を見せる。
「えーっとね。大絹さんは俺の上司にあたるのかな?俺まだ新米だからさ、それの指導してくれているのが大絹さん。」
「そうなんですか。………指導…ねぇ…」
健太君の最後の言葉が小さくて聞き取れず首を傾げれば、気にしないで下さいと笑顔を見せてくれた。
深く気にすることでもないなと思い、違う話題を話し始める。
健太君も面白い話しをしてくれて、気がつけばあっという間に日が沈んでいた。
「それじゃあ、また明日ね。」
「はい。また明日。」
お互いに手を振って別れる。
書類を忘れていたことに気づいて、仕事場へと戻って行く。
澤枝の姿が見えなくなった後、健太は携帯を取り出すとどこかにかけている。
「あぁ、俺だ。………そう…。いいカモが見つかった。」
健太は口の端を不気味につり上げるとうっすらと笑みを浮かべた…。
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