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「あ…の…大…絹さん?」
何か…と尋ねれば、大絹さんはうつむいていた顔を上げる。
その表情はどこか心配げで…
「澤枝、お前は…」
「はい?」
「い…いや。なんでもないんだ!こんな時間だからな気をつけて帰れよ!」
「は、はぁ…」
そう言って大絹さんは掴んでいた手を離す。
大絹さんの笑顔に違和感を感じる…。
「大絹さん。何か言いたいことがあったんじゃないんですか?」
「本当になんでもない。」
言い切られるように言われてしまえば何も言えなくなってしまう…。
「そ…ですか。それじゃあ、俺はこれで。大絹さんも早く帰って下さいね。寝ちゃっても起こせませんよ。」
「はいはい。分かった。」
気さくな笑顔を見せる大絹さんに俺も上手く笑えているだろうか?
また…俺に隠しごとしているのかな…?
そう思うと胸が痛かった…。
俺はまだまだ大絹さんに信用されてないのかもしれない…
帰り際、うっすら目に溜まる涙を拭った…。
「…………………」
「…………………」
昨日のことがなんか気まずく感じて、朝から挨拶を交わしたっきり黙って仕事をしている。
最初は話しかけていた大絹さんもぎこちない返事を返す俺に呆れたのか黙々と仕事をしていた。
早く終わる仕事がこうも長く感じるなんて初めてだぁ…
はぁーとため息をはぎながら、憩いの場所(喫煙所)でバナナミルクを飲む。
15分休憩で5分経って未だ一人も訪れないことにちょっと幸せを感じていると、「よっ!」と声をかけられた。
「渡辺…」
嫌いなタバコを吸う厄介者。でも、今は救世主。
「どうしたぁ?浮かない顔してー」
からかうような笑顔を見せる渡辺の笑顔が眩しくて…
「わ…わたなべえぇぇぇぇぇあぁぁぁぁぁぁぁぁー!!」
「Σうおあぁぁぁ!?」
助けを求めるように渡辺に抱きついていた。
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