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「お前…今の電話…」
「え?あ、あぁ。いや、なんでもない…。仲の良い友達からだったから…あ、じゃあ、俺行くわ。」
「え!?ちょ…」
渡辺が引き止めようとする前に喫煙室を出て行く。
深く追求されてバレたらまずいもんな…
遠のいて行く澤枝の背中を見つめながら渡辺は携帯を取り出す。
「もしもし…渡辺ですが…」
「終わったぁー!」
うーんと背中を伸ばしながら職場に立てかけてある時計を見れば19時を差していた。
「なんだか嬉しそうだな?」
大絹さんに声をかけられて、ビシッと石のように一瞬身体が固まる。
「あ…はは…。そ、そーですかぁ?気のせいですよ…」
自分にしては精一杯の笑顔(かなり怪しい)を見せ返事をかえす。
「そうか?」
「はい。あ、俺そろそろ帰りますね。」
大絹さんに深く聞かれる前に帰り支度を済ませ、大絹さんに別れの挨拶を告げ職場を出て行く。
「……………」
大絹さんが真剣な表情で俺を見ていたことにも気づかずに…
俺は待ち合わせの公園と来ていた。
「ここでいいかな?」
公園のベンチに腰掛けて健太君が来るのを待つ。
「澤枝さーん!」
20時ちょうど。
声がする方を振り向けば、手を振って駆け寄る人物が…
「健太……くん?」
二人…いや、もっといる…。
七人…?
「な…にすんだ!はなせっ…」
「澤枝さん。惨めな格好…」
二人がかりで腕を抑えつけられ身動きがとれない。
俺の前では、健太君が今まで見たことがないくらい狂気じみた笑みを浮かべている。
「健太君…ど…して…?なんで…こんな…」
「あっれぇ~?知りませんでした?俺、こいつらのボスなんすよ。大絹さんの部下だからてっきり知ってるかと思ったのに…」
がっかりだなぁとかけていた眼鏡を外すと地面に落とし、足で踏みつける。
踏み潰して壊れていく眼鏡を健太君始め仲間達は笑って眺めている。
異常だ…
ゾクッと背中に悪寒が走る。
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