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「澤枝!!」
覚悟を決めた瞬間、大絹さんの声が聞こえた。
「大絹さん!?」
「なっ…大絹!?」
俺からは見えないけど、健太君達は大絹さんが来たことにかなり動揺している。
「動くな。お前らの証拠は揃えている。もう逃げられないぞ。」
遠くから警察のサイレンが聞こえる…
「すみませんでした…」
あれから、大絹さんに引き上げられ、健太君は警察署に連れて行かれた。
連れて行かれる健太君達を見る前に俺は大絹さんに手を引かれ、現場から離れて歩いている。
この方向だと、俺のアパートを通る…。
「どうして謝るんだ?」
「だ…だって…大絹さんに迷惑をかけてしまって…」
背を向けたまま歩いている大絹さんが妙に恐くて声が震えてしまう。
「確かにな…」
その一言が胸にズキリと釘が刺さったかのように痛む。
「でも、黙ったままの俺にも否はあるからな。ま、お互い様だろ。」
「大絹さん…」
ニカッと後ろを向いて微笑む大絹さんにホッと心が安らぐ。
「お前を危ない目に合わせたくなくて黙ってたんだが、逆にそれがいけなかったな…。悪かった…。」
「いえ…。俺こそすみませんでした。大絹さんの役に立ちたくて…つい突っ走ってしまいました…」
シンと二人の間に一瞬静寂が走る…
「なぁ、澤枝…」
「はい?」
「お前を信用してないわけじゃない。でも、お前はまだ新米だから色々経験しなければならない。突っ走っるだけがいいわけじゃない。たまには冷静に物事を判断しなければならないことがある。簡単に命を落として欲しくはないんだ…」
「大絹さん…」
真剣に話す大絹さん。でも、どこかその表情には優しさが含まれていて…
「はい。ありがとうございます。すみませんでした。」
大絹さんに笑顔で返事をすれば大絹さんも真剣な表情が崩れいつもの気さくな笑顔を見せてくれた。
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