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「なんだ…これは?」
大絹さんの視線の先には火傷して包帯を巻いている俺の手があって…
「あ…す、すみません。俺ドジッちゃって…し、仕事には支障はないので…」
これ以上大絹さんに心配かけないよう掴まれてる手を離そうとするもビクともしない。
「あ、あの…大絹さん…手を離して下さい…」
「お前は…」
大絹さんの手が伸びてきて殴られると思い目を瞑る。
が…
「あまり…無茶するな…」
「あ…の…大絹…さん?」
気づいたら大絹さんの腕の中にいた…。
「仲がよろしくていいですね。」
遥さんの声に今の状況を理解して顔が真っ赤になる。
「ち…ちがっ…これは…」
「イチャつくのもいいが、俺達の書類ちゃんと確認しろよな。」
続いて勇弥さんの声。
「ち、違いますって!!お、俺は別に大絹さんのこと好きじゃありませんから!!!…………あι」
勢いで言った後に失言だったことに気づいて口を閉じるも既に遅しで…
気まずい空気が流れ、罪悪感で胸が押し潰されそう…
「あ、の…大絹さん…これは…」
「なに、気にするな。上司と部下の間柄だ。上司は嫌われるもんだからな…」
「ち、ちが…「じゃあ、勇弥。これは預かっておくぞ~」
「あ、あぁ…。」
否定をする前に大絹さんに遮られ、結局誤解を溶けず仕舞いに終わってしまった…。
「ご、ごめんね。えーと、この誤解は俺達が何とかするから。」
気にしないでねと浩志君の声が聞こえるが、今の俺には安心できるどころか焦りと後悔が胸を支配していた…。
「はあぁ~…」
浩志君達が帰った後、仕事が終わるまで俺と大絹さんは一言も話さず、気まずい空気のまま作業を続けていた。
重苦しい足取りで帰り道を歩いているが、ため息ばかりこぼれてしまう。
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