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「すみません!!大事な用があるんです!!」
「とっとと開けるアル!この人拐い集団が!!」
真撰組屯所の前で声を張り上げる少年と少女。眼鏡の少年はいつになく緊迫した面持ちで。お団子頭の少女は今にも門を破壊しそうな勢いだ。
「何でィ、万事屋の旦那んとこのメガネとチャイナじゃねェか」
漸く開いた門から顔を覗かせるは真撰組一番隊隊長・沖田総悟。琥珀色の髪と同色の瞳の甘い容姿が人気だが、迂闊に近づいた者はどんな目に合うか分からない……サディスティック星の王子である。
「サドォォッッ!!銀ちゃんを返せェェッッ!」
僅かに開いた門の隙間から神楽の腕が伸び、沖田の胸ぐらを掴み上げる。
「グェホッッ!何しやがんでィ!」
門の隙間に顔が挟まってしまった沖田。折角の美形も台無しだ。
「銀ちゃんを返せって言ってるアル!とぼけても無駄だからナ!」
顔が挟まった挙げ句、神楽の馬鹿力で頸元を締め上げられれば流石の沖田といえども酸欠寸前だ。状況の不味さに気づいた新八によって神楽から解放された頃には、沖田の両頬にはくっきりと縦縞模様が浮かんでしまっていた。
「……で。旦那が行方不明なのは分かったが、捜索願いを出すならまだしも何でうちを疑うんでィ」
「とぼけんなヨ!お前らが銀ちゃんを拐ったに決まっている!」
「沖田さん。銀さんはですね、一昨日には江戸に戻って来る筈だったんです。それが……」
「連絡も寄越さず。雲隠れってわけかィ」
「……仮にそうだとしても、銀さんが僕らに黙っていなくなるなんてあり得ません」
「銀ちゃん言ってたアル。土産買ってくるって。お金無いから高価いのは買えないけど、何かは買って……“帰ってくる”って」
ぐすぐすと鼻を啜る神楽に珍しく困った表情を見せる沖田。
「だけどなァ」
返そうとした沖田の台詞を遮る……新八の声。
「……僕達だって何の手がかりも無しに武装警察である貴方方に言いがかりなんてつけません」
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