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台風真っ只中だった。
妙に気持ちが焦るのは、激しい雨音の所為か。
――この人としている行為の所為か。
窓を叩く雨音が激しさを増す。
それに比例するかのように心に生まれた、この不穏な感情も大きく膨れ上がっていく。
表情(かお)に、出てしまっていないだろうか。
心配になって閉じていた瞳を薄く開けると、余裕のない男の顔が目の前にあった。
「……ッ」
――大丈夫。
そう思いもう一度瞳を閉じた時、小さく漏れた男の声を、風の音が掻き消していった。
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