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その日はよく晴れた秋の昼下がりでした。
久し振りの休日は、家で怠惰に至極優雅な時間を過ごそうと決めてましたがどうもまんじりとせず、近所の公園にでも行く事にしました。
道中の街路樹は夏に蚊が湧くのですが、幸い既に秋も深まり所々蜘蛛の巣が残るのみでした。
のんびり歩いていると、茂る葉の隙間にキラリと光るものを見つけました。
何だろうとその場にしゃがみ、硬い枝葉を掻き分け覗くと、そこには黒い矢尻の切っ先が地面から飛び出していたのです。
すぐに手を伸ばして指先で揺すると、それは存外楽に抜けました。
掌に取りしげしげと観察すると、黒い石で出来た矢尻は細かく叩かれた跡が無数にあり、古の技を髣髴させます。
ほうと感心し、遠い時代の狩猟に暫し思いを馳せました。教科書等とは違い、掌で見る矢尻はとても美しく輝いていました。
これはいい物を手に入れたと、私は黒い矢尻をポケットに仕舞い満足感に浸りました。
そして思わぬ酒の肴を土産に、私は公園には行かず、にこにこ笑いながら家へ帰ったのです。
最高に怠惰な休日に乾杯!
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